The Longest Dialogue

 

作品について:

 

イギリス東海岸のKingston upon Hullという地方都市に1981年から17年間世界一の長さを誇った吊り橋がある。


私がこの小規模な街に滞在したのはたまたまであったが、「日本から来た」というと、皆が口を揃えたように日本の橋が自分たちの『世界一長い橋』の記録を破った、と言う。調べてみると彼らの誇りである「ハンバー橋」の記録を破ったのは1998年に開通した「明石海峡大橋」であることが分かった。

「世界のどこかにかつての一番長い橋があり、でも今は別の場所に更に長い橋がある」

という事実に単純に心が動いた。「かつて」の人々が、記録を更新した「現在」の人達に特別な思いを抱いていること、そして「現在」の殆どの人々はその事実すら知らないというアンバランスな関係性に興味を覚え、その繋がりの糸をイメージしながら、そもそも橋とは何なのだろうかと思い始めた。
 

橋とはなんだろう。

 

2つの橋の「こちら側」と「あちら側」を歩き、そこから橋を眺めることで、私自身に見えてくる景色があるだろうかと。

正確にいうと「ハンバー橋」と「明石海峡大橋」は「吊り橋」という橋の形態に分類される。吊り橋は「渡す」ことが困難な、地形的な厳しさを持つ場所に作られることが多い。

 

脚となる橋脚を多く設置できない場所で、両岸にアンカレイジという大きな重しと2本の支柱を設け、その間の橋桁をケーブルの張力を用いて吊り下げる方式がとられる。吊り橋が世界一を競う時、それは高いタワーのような支柱と支柱の間の橋桁の長さについて競うのである。

吊り橋建設とは、国の威信をかけたプロジェクトである。土木工学分野の叡智が結集され、高度な技術を持つエンジニア達が関わる大事業であり、当然ながらもたらす経済効果にも大きな期待が寄せられる。橋について調べると、投影されるものは大きく、多岐にわたることが分かってくる。

しかしながら、そんな国家的事業の勇ましい調子とはかけ離れて、私が歩いた4つの町は共通して、耳をすませば、行き交う車の音に混じって鳥達のさえずりが聞こえてくるような繊細な場所であった。美しく取り残され、富が落とされる場所からはむしろ遠く乖離しているように感じた。

「世界一」というプライドをそっと携えて彼らは今日も橋を眺めているだろうか。「繋がりたい」という私達の思いの形を。それは、向き合いつつ背中合わせになり、近づきながら遠くなる。 始まりと終わりは常に入れ替わり、更に遠くへ繋げてゆく。

 

ハンバー橋と明石海峡大橋。この2つの橋が持つような静かな繋がりや結びつきは、世界にはきっと無数に隠れているのだろうと想像してみる。空中に浮かぶ見えない線を辿る時、姿を現すように、声が聞こえるように。橋が見え、耳を澄ませた。

「The Longest Dialogue」について

アバロス村野敦子

2020年10月

 

 

About "The Longest Dialogue":

THE LONGEST DIALOGUE” is an exploration of what meaning or impressions large bridges have, to its environment and to the people who look at them. Through photography, the dialogue and relationship that the two single-span suspension bridges, the Humber Bridge, UK, and the Akashi Kaikyo Bridge, Japan have, starts to come to light. 

 

When the Humber Bridge was first opened in 1981, is was a source of national pride, as it held the record as the world’s longest single-span suspension bridge for 17 years, up until the record was broken by the Akashi Kaikyo Bridge in 1998. Both bridges show rich histories of competition, ingenuity, and perseverance, that show how the two bridges’ destinies have been intertwined.

 

The dialogues being explored may have started with how the two suspension bridges are connected, but it continues on, with how much more connectedness can be found between the people, animals, machines, structures that exist alongside them. Even going further, it ponders on the question of: “Where can similar dialogues be found in other parts of the world?” 

 

Bridges have the inherent purpose of bringing people and things further than previously possible. In the same way, this project also hopes to explore how much farther these “unseen” dialogues and connections can reach. 

Atsuko Murano Abalos

October, 2020